・ドビュッシーのラプソディの概要・歴史
近代を代表する作曲家の一人である『クロード・ドビュッシー』
従来の和声法や音階にとらわれない作風で、新たな色彩を表現しました。
有名な曲では「月の光」「亜麻色の髪の乙女」「海」 "のだめカンタービレ" でも登場した「喜びの島」など数限りなくあります。
曲名は知らなくても一度はメロディを聴いたことがあるのではないでしょうか?
今回はその中で唯一サクソフォンが使われる曲【サクソフォンと管弦楽のためのラプソディ】について、その歴史と背景に迫っていきます。
目次
-「エリザ・ホール」って何者?-
この曲は「エリザ・ホール」夫人という人物の委嘱によって書かれました。
エリザ・ホール夫人は、病気のリハビリのためにサクソフォンを始めたアマチュア奏者です。
かなりの資金を持っていたらしく、自分が演奏するための曲を当時活躍していた作曲家に次々と委嘱していたそうです。
代表的な作曲家は「フィリップ・ゴーベール」や「フローラン・シュミット」など名の知れた方がたくさんいます。
委嘱した作品の数は、なんと20曲以上!!僕もお金があれば曲を書いてもらいたいものです・・・
その中にこの【サクソフォンと管弦楽のためのラプソディ】もあります。
エリザ・ホール夫人
-作曲期間のお話-
この作品はドビュッシー自身の自筆譜が存在しており、インターネットで公開されています。
こちらから見てみてください
その1枚目には「1901~1908」と書いてありますが、1901年頃委嘱を受け、1908年頃エリザ・ホール夫人に譜面を渡したのでしょうか?
この7年間の空白は一体なんなのでしょうか?
実は「あまり気乗りしなかったから」進まなかったそうです。
とんでもない理由ですね!!かなりのお金をもらっているのに!!
ですが、ドビュッシーはスケッチや下書き程度で、曲まで仕上げなかったものもたくさんあるそうなのです。
同時期には先に述べた交響詩「海」や「喜びの島」も作曲しています。そのせいで二の次になっていたのでしょうか・・・
気乗りしないことを後回しにしたい気持ちはわかりますが、ちゃんと書いて欲しかった!!
最終的にエリザ・ホールに譜面は渡せたのでしょうか?譜面が残ってるってことは納品したんでしょうね。
一安心。と思いきや!
-オーケストラとの共演のはずが!?-
渡した譜面はなんと!サクソフォンパートと大譜表の三段の楽譜!「サクソフォンと管弦楽のための」という依頼だったにもかかわらず!
「大体は書いたからオーケストラパートはなんとかしてね」ってことなのでしょうか・・・?
これはえらいこっちゃです。現代だったら金返せレベルの話ですね・・・
結局その後、その譜面に手を加えることなくこの世を去ってしまったドビュッシー。
その曖昧なスケッチが現代まで続く波紋を呼んでいきます。
おおよそこんな感じで書かれています。一応曲の最後までスケッチはあります。
メロディラインはほとんど完成させていたようですね。
全部見たい方はこちら
-版によって大違い!?-
オーケストラの譜面を完成させずに亡くなってしまったドビュッシーですが、その後1919年に友人のロジェ・デュカスによって管弦楽編曲されます。
そうです、ついにこの作品が日の目をみる時が来たわけです。初演はサクソフォンの神様「マルセル・ミュール」の師匠「フランソワ・コンベル」、指揮は「アンドレ・カプレ」という豪華なメンバーで!
そしてその楽譜は現代でも使われます。「デュラン」という出版社が出している楽譜が原典版と呼ばれています。原典版の楽譜はこちら
その楽譜はドビュッシーの自筆譜に忠実で、サクソフォンが演奏する箇所があまりにも少ないのです。アマチュアのエリザ・ホール夫人を意識してなのか、めんどくさくなったのか、とにかく演奏箇所が少ないです。
オーケストラがどんなに盛り上がっていようが、サクソフォンはおやすみ。
どれだけ華麗に演奏していようが、おやすみ。ひたすらおやすみ。
初演から時代が進むにつれて、楽器の性能は上がっていきます。そうなってくると、血気盛んなサクソフォニストたちはそんな譜面では満足できなくなります。
そして、各々がオリジナルの楽譜を作り出版していくのです。
-そして現代では-
現代では実に10以上の版が存在しているらしいです。僕も全部を見たことはありません。
それぞれの版によって、演奏箇所のみならず、アーティキレーション、強弱までもが変わっているのです。
さあ大変。一体どれを信じれば良いのでしょうか・・・?
それは・・・むしろ逆です!!
どれかに絞る必要なんてないのです。吹きたいところを吹けば良いじゃない!
そんなふうに選択肢があって、選ぶことができるだけ幸せです。
ピアノやヴァイオリンの曲は、最初にどの出版社の楽譜で演奏するのか決めたりします。
「〇〇の出版社の楽譜が良いよね」とかそんなふうに言えるような曲、サクソフォンにはほとんどないです。
そんな中、このドビュッシーのラプソディは出版社を選び、演奏箇所を選び『音楽を選ぶ』ことのできる素晴らしい曲なのです。
ドビュッシー自身が最後まで書き上げ "なかった” からこそ生まれた、この「余白」こそが、この曲最大の《価値》ではないでしょうか。
【公演情報】
2022年1月9日 浜離宮朝日ホール
前代未聞!!サクソフォン17本を使った動物の謝肉祭を演奏!!
半年間レッスンしてきたプロデュース企画の集大成!REVとドビュッシーのラプソディを共演!!
チケットは→こちらから←
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