EP.5|上野耕平 × 松原くん

サクソフォン奏法における「息の渦」と、その解消 ── 喉・ネック・アンブシュアの連動

プロデュース企画2023シリーズ第5回。フェルリング エチュード集 第29番を吹いた松原に、上野耕平が指導した5分間のレッスン。診断は『息の渦』── そこから喉・ネックの一体化、リードの厚さ、アンブシュアの圧の方向、咥える位置までを連続して解いていく、サクソフォン奏法の体系を示す記録である。

本レッスンの概要

本レッスンは、プロデュース企画2023年シリーズの第5回として収録された。受講者の松原はレッスンの冒頭で「基礎の根底にあるところから見ていただきたい」と希望を述べる。求められたのは曲の表現ではなく、サクソフォンを吹くという行為そのものの再検討である。課題曲としてフェルリング エチュード集 第29番が選ばれた。

診断 ── 息に「渦」が生じている

演奏を一通り聴いた上野耕平の評価は、肯定から始まる。

[1:24]今聴いた第一印象は、息はそんなに悪くないです。重心もそんなに上がることもないし、ただちょっと膝を曲げすぎて他のところに力が入っちゃうのはもったいないんだけど、息を送るときにここでまず変な渦ができてるんですね

── 上野耕平

本レッスンにおける「渦」とは、息が口から喉を抜けてネックを通り、リードに到達するまでの通り道に生じる流れの乱れを指す。呼吸量や姿勢の評価をクリアした上で、その先にある「息の通り道そのものの形」が、これ以降5分間の主題となる。

折り返しで喉を開きすぎない

渦が最も発生しやすい局面として、上野はフレーズの「折り返し」を挙げる。

[2:11]折り返すと喉めっちゃ開いてる? それをね、あんまり効果ないんですよ

── 上野耕平

折り返しで喉を意識的に大きく開く奏法は、本レッスンにおいて「効果がない」と評価される。深く吸うこと自体に目的があるのではなく、その息がリードまで届き、振動として現れることに目的がある ── という原則が示されている。

喉とネックを「一体化」させる

渦を解消する根本のアプローチとして、上野は「一体化」という概念を提示する。

[2:39]今までの吹き方だと、こう息がきて、ここで渦を作って、「さあこっから吹こう」っていう風に聞こえるんですよね。そうじゃなくて、ネックはここまで繋がってます。一体化させてください

── 上野耕平

「ここから吹こう」と意識した瞬間、息は一度停止する。その停止が渦を生む ── という因果関係である。これを避けるためには、喉・口腔・マウスピース・ネックを別々のパーツとして扱うのではなく、息が通る一本の連続した管として捉え直す必要がある。

新しい意識で吹き直す松原に対し、上野は短く反応する。

[3:20]掴むの早いね

── 上野耕平

吹き方が変われば、リードの最適値も変わる

「一体化」を体得した松原の音には、わずかな揺れが残る。上野はこれを「筋肉が対応していないため」と分析した上で、新たな仮説を述べる ── その吹き方であれば、リードが薄いのかもしれない、と。

サクソフォン奏法において、リードの厚さは吹き方と相互に依存する。一方を変えれば、もう一方も再選定の必要が生じる。本項は、サクソフォン奏法の連続性 ── 一つの要素を変えると他の要素も再調整を要する性質 ── を示すやり取りである。

マウスピースとリードを「近づける」ための圧

ここから話題はアンブシュア(口元の構築)へと移る。上野はまず、マウスピースとリードの関係性を以下のように整理した。

リードを全く支えない状態では振動は生じず、音は鳴らない。したがって、ある程度の距離まで「近づける」必要があり、そのために圧をかける。ここまでは前提である。本レッスンの主題は、この圧の「方向」にある。

下顎全体で「押し上げない」

[3:52]下顎全体の動きとして押し上げるんじゃなくて、最近こうするって言ったじゃん。それをうまく活用してほしいんですよ。今なんか、下顎全体でちょっとリードを押しちゃってるんだよね

── 上野耕平

リードを近づけるための圧は必要であるが、下顎全体を上方向にスライドさせて「押し上げる」操作は、リードに垂直方向の力を加えることになり、振動の起点を潰す。圧の必要性と、圧の方向は別問題として扱う ── これが本項の原則である。

リードの端を「包む」、息を「回す」

下顎全体で押し上げない代わりに、上野は「包む」という感覚を提示する。

[4:30]ここのリードってこうあるじゃん。これが、こう、端っこが暴れると痛い音になるんだよね。だからその端っこをちょっと包んであげようと思って、息を回す

── 上野耕平

リードの先端の左右の端 ── 振動の境界にあたる部分が「暴れる」と、音は荒れて硬質な響きになる。これを抑えるための方法として、その部分を息で取り囲むように吹く感覚が示される。動詞は「押し上げる」ではなく「包む」、そして息は「回す」── 方向と感覚のセットでの再定義である。

息の方向 ──「飲まず、まっすぐ前に」

[4:48]息は飲まない、まっすぐ前に

── 上野耕平

息を喉方向に「吸引する」感覚ではなく、楽器の管の方向 ── 真っ直ぐ前へ送り出す。前項の「リードの端を包む」と表裏一体をなす、息の方向に関する原則。

咥える位置は感覚を優先する

新しい意識で吹く松原の口元の変化を確認しながら、上野は次の問いを発する。

[5:19]咥える位置、変えた? 全然変えてもいいの? 好きにやって

── 上野耕平

アンブシュアの圧の方向が変わると、唇とマウスピースの接触位置 ── 咥える位置も自然に変化することがある。本レッスンにおいて上野は、咥える位置を一つに固定する姿勢ではなく、感覚が掴めるかどうかを優先する姿勢を示している。

本レッスンのまとめ ──「いい音が鳴りそう」

数回の試行のあと、松原は次の感触を述べる。

[5:34]いい音が鳴りそう

── 松原くん

上野の応えは短い。

[5:36]そのトライ続けて、何回か試してみたら

── 上野耕平

本レッスンで扱われた「息の渦」「喉とネックの一体化」「リードの厚さ」「アンブシュアの圧の方向」「リードの端を包む息」「息の方向」「咥える位置」は、それぞれ独立した項目ではなく、相互に連動するサクソフォン奏法の一つの体系を成している。

※ この記事は、YouTube で公開されているレッスン動画の内容をもとにAIが編集・再構成したものです。発言は読みやすく整えており、固有名詞や表現が実際と異なる場合があります。正確な内容・ニュアンスは動画でご確認ください。

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