プロデュース企画 2022|EP.10 宮越悠貴 レッスン②
トマジ「バラード」のルーツを辿る ── 宮越悠貴が紐解く、ブルース・ケルト・ヨナ抜き音階
1時間40分におよぶ宮越悠貴の2回目のレッスン。共演曲トマジのバラードを、スケールとスタイルの両面から紐解いていく。ブルースのイメージ、調性の曖昧さ、そして冒頭の旋律に隠されたケルト音楽とヨナ抜き音階の関係 ── 楽曲の背景を深く掘り下げた、音楽学的な一回。
午前中のレッスン ── 曲の魅力を語る
初めての午前中レッスン。眠そうな紺野さんに、宮越悠貴はいつもと違う問いから入る ── この曲のどんな部分が好きか。紺野さんは、カデンツァが終わってテンポが上がり、ジグに戻った後の「チャイムのような音」に開放感を感じると答える。前回の上野レッスンを経て、曲のストーリーが以前より自分の中で確立できてきた、とも語った。
ブルースをどう捉えるか ── イメージを紐付ける
後半のブルースのテンポのセクション。宮越は、紺野さんがこの曲のブルースをどうイメージしているかを尋ねる。紺野さんは、自分で調べた知識を語った。
[6:02]「アメリカにいる黒人の人たちが、奴隷制度とかいろいろあった中でも、そういう悲哀の曲というか、悲しみとか持ち合わせつつ、でも音楽を楽しんでるっていう、そういう感じの曲だと思ってて」
宮越も、ブルースが黒人の労働歌や霊歌に起源を持つとされることを補足する。トマジがどんな意図でここにブルースを入れたかは分からないが、本人なりのイメージがあったはず ── だから、自分の中のなんとなくのイメージを音に紐付けておくとよい。宮越自身は「足に鎖を繋がれても一歩ずつ歩いていくような」イメージを持っているという。
一方で、テンポや息が持つかという技術的な不安に意識を取られすぎていることも指摘。練習時には大事だが、一度それを取っ払って、スラーの中で「すってはいけない」と思いすぎず、優先順位を変えて吹いてみることを勧めた。
テヌートとスタッカート ──「書いた意味」を吹く
アーティキュレーションの細部では、テヌートの解釈が話題になった。紺野さんは「長さを十分に保つ」と答える。宮越は、そこに自分なりの感覚を加える。
[9:53]「シーンによってそれぞれ長さって絶対違うじゃん、同じ記号でも。だからなんか、普通じゃなく吹いてみたいなイメージだといいかも」
スタッカートは「短い種類の中から」、テヌートは「長い中から」、自分で選んで吹く。記号がそこに書かれているのは、普通とは違う吹き方をしてほしいから ── 広いホールでは、その差をもう少しオーバーにやった方がいい、とも。なお、パート譜のクレッシェンドはスコアではピアノ側にしか書かれておらず、宮越は誤植の可能性を指摘しつつ、もしクレッシェンドするなら理由付けが必要だと助言した。
「対1人」── ホールで4人を相手に
本番では、後ろに3〜4人のメンバーがいる。アレンジ次第ではあるが、伴奏が和音で迫ってくる場面では、独奏が引っ込んでいては届かない。
[14:42]「対1人じゃん。もうちょっと吹かないと、いくらこっちが小さくきても結構厳しいと思うけどね」
調性の曖昧さ ── 一つの音が色を変える
ある箇所が明るいか暗いか ── 紺野さんは「暗いんだけど、ちょっと光が射している」と答える。宮越も、どちらとも言い切れない曖昧さを認めた上で、その色を生む要因を分析する。
[16:08]「完全に明るいってわけでもない感じだけど、なんかね、その(音階の中の)一つの音が、ちょっと明るい雰囲気を出させていると思うんだよね」
短音階の中で、特定の音が曲の色を大きく変えている。旋律的短音階とも全音階とも取れる、その揺らぎが曲の表情を作っている ── 宮越はそうした和声の機微を、ピアノで和音を弾きながら解説した。一音ずつ加工されていくハーモニーの美しさに、宮越自身が「めちゃくちゃ綺麗だった」と感嘆する。
曲のルーツ ── ケルト音楽とヨナ抜き音階
この回で最も興味深かったのが、曲のルーツの考察だった。宮越は、冒頭の旋律がイギリスの古い音楽 ── グリーンスリーブスのような古謡やケルト音楽に通じるのではないか、と語る。そして、ケルト音楽のスケールを調べた末の発見を共有した。
[19:43]「ケルト音楽で使われているスケールって何だろうと思って調べたら、これが日本で使われるヨナ抜き音階という五音音階と同じだった」
ファとシが入っていない五音音階 ── それがケルト音楽と日本の音階に共通している。この曲が日本人に好まれる理由は、そこにあるのではないか、というのが宮越の考察だ。加えて、半音で下降していくコード進行(ポップスでも多用される)への親しみも、人気の一因ではないか、と。
不思議な縁 ── 紺野さんとケルト音楽
ここで、紺野さん自身の意外な背景が明かされる。
[21:13]「ちっちゃい頃からケルト音楽が結構家でかけてたらしいんですよ。イギリスかアイルランドの民謡もそうだし、ジグも結構かかったりとかしてて。1歳とか2歳の時こうやって動いてた」
純粋な日本人でありながら、幼い頃からケルト音楽に親しんできた紺野さん。そんな背景を一切知らずにこの曲を提案していた ── という巡り合わせに、宮越も「面白いね」と驚いた。曲のルーツと奏者のルーツが、思わぬところで重なっていた。
受講生の振り返り ── 3人の視点の違い
1時間40分のレッスンを終え、紺野さんは、3人(上野・都築・宮越)の視点の違いを言葉にする。
[23:50]「上野さんは流れとか大まかに見てる感じ、都築さんは発音とか小さい部分でもつまんで見てくださって、宮越さんはこういう音階だからとかこういう音だからっていうのを踏まえて教えてくれたりとかして。逆にいろんな視点からトマジのバラードを見ることができている」
4人のキャラクターはバラバラで、演奏への考え方も意外なほど違う。それでもアンサンブルすると一つにまとまる ── だからこそ、4人に教わるからこそ知れることがある、と紺野さんは語った。中学3年生とは思えない洞察だった。次は田中のレッスン、そしてリハーサルへと近づいていく。
※ この記事は、YouTube で公開されているレッスン動画の内容をもとにAIが編集・再構成したものです。発言は読みやすく整えており、固有名詞や表現が実際と異なる場合があります。正確な内容・ニュアンスは動画でご確認ください。



