プロデュース企画 2021|EP.9-1 宮越悠貴 レッスン②〈前編〉
「田舎3連符」と嘆きの半音階 ── 宮越悠貴が楽譜を細かく読み解くドビュッシー
本番まで2ヶ月、3時間におよぶ宮越悠貴の2回目のレッスン。共演曲ドビュッシーのラプソディを、楽譜の細部まで徹底的に読み解いていく。フリーな部分のリズム、出だしの一音、強弱に必要な「時間」、そして下唇というクッション ── その前編。
3時間レッスンの始まり ── 楽譜を細かく
宮越悠貴の2回目のレッスン。前回(1周目)以降、米山くんはリズムを重点的に意識して練習してきたという。この日は時間がたっぷりあり、共演曲ドビュッシーのラプソディを最後まで通すことが目標。本番まで残り2ヶ月、楽譜を細部まで読み解く3時間レッスンが始まった。
フリーな部分も「リズムを失わない」
冒頭のセクションは自由(フリー)な性格が強い。だが宮越は、自由であってもリズムとテンポを手放してはいけないと釘を刺す。
[3:20]「フリーだからといってテンポがなくなってはいけない。絶対に自分の中でカウントがある、それをどうやって自由に揺らすかっていうところ。カデンツァだけ、絶対にそのリズムを持って吹かなきゃいけない」
3連符の中の16分音符と、通常の16分音符では長さが違う。その区別が曖昧だと、フリーな部分が「ただ崩れているだけ」になってしまう。まずはカウントを取りながら、揺らさずに吹いてみることを宮越は求めた。
出だしの一音が勝負 ── ハーフタンギングとノンビブラート
宮越が特に重視したのが、曲の出だしだった。
[6:57]「曲の出だしって一番大事だから。そこでお客さん、聞いてる人が掴めるか掴めないか、そこで引き込む力がすごい重要」
頭の音を、怖さからタンギングして入ってしまっている ── 宮越はそう見抜き、前回の都築レッスンで触れたハーフタンギングを研究することを勧める。さらに音色については、頭の部分をノンビブラートで吹く方が引き込まれるのではないか、と自身の好みを示した。フレーズに入ってからうっすらビブラートがかかり始めるくらいがいい、と。ディミヌエンドして音をゼロで終わらせる表現は、クラリネットやサックスほど綺麗にできる楽器は他にない ── だから存分に使うべきだとも語った。
「嘆きの半音階」── 半音で下がる感情
半音で下降していく音型について、宮越は感情的な意味を込めて説明する。
[8:11]「この半音で下がっていくって、すごく感情が強い動き方で。嘆きの半音階、そういう名前がつくぐらい大切な動き方ですね」
音型としては機械的に並ぶ半音階も、その背後にある「嘆き」という感情を意識することで、表現が変わってくる。
「田舎3連符」に気をつける
リズムの細部では、3連符が不正確になる箇所を宮越は指摘する。これには、自身の経験に基づいた印象的な言葉があった。
[8:11]「自分が高校生の頃にも、その3連符で先生に捕まったことがあって。「田舎3連符だ、田舎3連符だ」って言われまくったから、そこだけ気をつけてね」
また、基礎のレッスン(フェルリング)で扱った音色の変え方を、この曲の中で活かすことで色彩感が増える ── 過去のレッスンとのつながりも宮越は促した。
強弱には「時間」が要る ── 自然界の物理法則
再現部に入ると、リズムは正確に吹けるようになっていた。次の課題は、メゾフォルテからピアノへ急に落ちるような強弱の処理。ここで宮越は、忘れがたい比喩を持ち出す。
[13:14]「大きいところから小さいところに行く間、エネルギーが小さくなっていく時間が必要だから。自然の摂理とか物理法則、そういうものに絶対にクラシック音楽は逆らっちゃいけない」
車が止まるにも制動距離があり、一気には止まれない。重いものを落としても下で必ずバウンドする ── 急にゼロにはならない。だから大きい音から小さい音へ移るときも「間(時間)」が必要で、前の音が大きいほどその時間は長くなる。この感覚はアンサンブルで特に重要で、一緒に演奏する人と合っていないと絶対に揃わない、と宮越は強調した。
また、休符やブレスを挟むと前後の音量が急に変わってしまいがちだが、降りていく流れの中で次に入っていくこと ── そうしないと音楽が「凸凹」になってしまう、とも指摘した。
下唇は「クッション」── 一番鳴るポイントを探す
音色の調整では、下唇の使い方が話題になった。宮越は、口を一度緩めて吹き、そこから少しずつ戻して一番鳴るポイントを探す方法を示す。
[18:44]「下唇を使ってるってことはクッションだから、このクッションをどれくらいの弾力で使うかってすごい自由なわけよ。それを上手に使わないともったいない」
下唇をフレキシブルに、柔らかく使う。低い声のイメージで吹くと、どっしりとした充実した響きになる ── 実際にポイントを探り当てた米山くんの音を、宮越は「めちゃめちゃいい音」と評した。
音量は「遠い・近い」でも考える
音量についても、宮越は単純な大小を超えた視点を示す。
[21:30]「音量は単純な大きい小さいだけじゃなくて、前後も考えた方がいい。遠い近い。それをしっかり考えたら、遠くで誰かが言ってるみたいな印象っていうのもありだよね」
連符は「目印」を持つ
連符が続く箇所では、音が飛んだり並びが揃わなかったりする。宮越は、拍の目印を持つことを勧めた。連符の中で「次の拍がちゃんと来ているか」を感じることで、音の配列が安定する。細かいところをどれくらい丁寧にやれているか ── そこが重要だと宮越は繰り返す。3時間レッスンはまだ途中、楽譜の細部を一つずつ詰めていく作業が続いていった。
※ この記事は、YouTube で公開されているレッスン動画の内容をもとにAIが編集・再構成したものです。発言は読みやすく整えており、固有名詞や表現が実際と異なる場合があります。正確な内容・ニュアンスは動画でご確認ください。



